金融時系列プライスの予測

NN予測の可能な利益率

これまで我々は数学的実験結果を正確な予測のサインとして説明してきた。
今からはNNを利用するトレードを行った場合の到達可能な利益率について調べてみることにしよう。

到達した予測可能なレベルを取引コストが取り消すほど大きくなる前に我々は取引コストを考えに入れなければ、上記で得られた利益率の上限(変動を考慮していない)へは実際のところ到達は困難である。

実際、手数料を考えると崩壊定数という形で表現できる。
すなわち

TimeSeriesForecasting55.gif

さらに手数料γは予測可能レベルεとは違い線形であって二次的ではない。
上記の例では、予測可能性ε=0.08は手数料γ=0.1を超える事はできない。

金融分野へのNNの利用についての可能性について検討するために、時間枠の異なる3つの指標でNNを使った自動売買を行った結果を見てみる。

S&P500は月足で、DM/$2は日足、Lukoil(ロシア取引所)は1時間足である。

予測の統計は50個の異なるNNシステム(50個のNNのコータリを含む)を基にしている。
時系列チャートとそのチャートの最後の100の値のサインの予測を図16に表した。

TimeSeriesForecasting56.gif

これにより直感的に明らかな規則性を裏付ける結果となった。
すなわち、時系列がより予測可能になるほど(チャートの)時間間隔は短くなる。

実際、時系列の隣り合う数値間の時間間隔が長くなるほど、その値動きに関係するより多くの情報をマーケット参加者が利用可能となるため時系列中には未来に関する情報はより少なくなる。

上記で得られた予測は実験上のトレードに使われる。
また同時に各トレードでの取引枚数は予測の信頼度に比例して調整され、その上全体のパラメータσの値は学習サンプルへ最適化される。

一方で、そのトレードの成功に応じてコータリ内の各ニューラルは独自の変動的な格付けがされる。
各トレードでの予測において実際にはネットワークの”ベストな”部分のみを使う。
この”ニューラル”トレーダーによる結果を図17に示した。

TimeSeriesForecasting57.gif

最終的な勝利(戦略ゲームのように)はもちろん手数料の大きさにかかっている。
上のダイアグラムでは手数料への依存性が見られる。
(著者の知る測定の選択単位での)実際の手数料を上図に印をつけた。

この実験では実際のトレードの”量子化された”性質は考慮されていない。
すなわちトレードのサイズは標準的取引枚数の整数値と同じにする必要性を考えていない。

これは標準的なトレードの取引枚数が多く大きな資金でトレードすることを意味する。
その一方で保障されたトレードがあることが暗示されている。
つまり取引枚数よりもはるかに小さい資金に対しての比率として利益率が計算されている。

上記の結果はNNを基にしたトレードが少なくとも短期間では実際に保障されていることを示している。
さらに、金融時系列の自己相似性の観点(1994, Peters)から、時間に対する利益率が高くなるほど標準のトレード時間は短くなる。

こうしてNNを使った自動売買は、一般のブローカーを上回る優位性(疲労への耐性、感情の影響の受けにくさ、潜在的なより早い反応速度)があることがはっきりわかる実際の時間枠でトレードを行うときに最も効果的なものになる。

自動売買システムに接続したうまくトレーニングされたNNは、(人間である)ブローカーの端末上のプライスの動きへの認識よりもかなり早く決断を下せるのである。

結論>

少なくともいくつかのマーケットの時系列が部分的に予測可能であることをお見せした。
ほかの種類のニューラル解析のように、時系列の予測はかなり複雑で慎重なデータのプリプロセッシングが要求される。

しかしながら時系列を予測することは利益を増やすのに使える特有の性質をもっている。

これは入力の選択(データの表現に特別な方法を使って)と出力の選択そして特殊なエラー関数の使用に関連がある。

記事の最後では、コータリニューラルエキスパートの使用が別々に分かれたNNの使用に比べていかに多く利益を生む可能性があるのか、そしていくつかの実際の金融商品での利益率のデータを示した。

*本文の訳はこれで終わり。

数学の世界、それも大学の数学系以上のレベルの言葉と知識が出てきており、正直金融へのNNの使い方の”感覚”が理解できる程度で終わりそうな予感がしているが、とにかくこの作業を続けるしか今のところ道がない。

この内容を理解できるレベルの人がこの記事についてどのような感想をいだくのか、それが記事の下に追記されたRaghu氏の書き込み。
この訳を以下に掲載した。

これは芸術作品だ。
すべてを書いた後にこう述べている。

「少なくともいくつかのマーケットの時系列が部分的に予測可能であることをお見せした。」、と。

”少なくともいくつかの”?

1時間足を使って、始値と終値に印をつけプライスが動く方向にポジションを取り、取引を何回も行ったとしたらその少なくとも50%が正しい結果となるだろう。

(NNの)ロボットはそのプログラムの論理的考え方が人間の考え方と同じように良いというだけである。

私はロボットをどんなことを行うにもカーブフィッティングすることができるし、自動学習ロボットは”与えられた期間”から得た経験から”学習する”ことだけが可能だ。

私はロボットがすばらしいことを行えることにはまったく賛成するし、私自身ロボットを使っている。

私たちが思い出さなければならないのは、少なくともロボットは未来を予測することはできない、ただしこれから何が起こりうるのかということを過去の経験を基にして推測を行えるだけである、ということだ。

「未来を予測する」と言う代わりに「過去に起きたある一定の動きをパターンとして認識する」と言うべきである。

前者の言い方が使いやすいことはわかるけれども、それは誤解を招きやすい。

ロボットをベストなパターンを学習させることに使うというアイデアはいいと思うし、私もそれを”妙な言葉使いをせずに”お勧めする。

*訳は終わり

読み直しても難しいことには変わりはない。
そこで次の論文をみつけた。
少し内容が似ているようで、このNNの世界への理解をより深めてくれる。

http://ww.mtl.t.u-tokyo.ac.jp/Research/paper/2002/J02-thesis-yamaguchi-ar.pdf